【コラム】心理的社会

洛西支部 野間 洋平

 親父にもぶたれたことないのに!
 かつては笑いのネタとしてミーム化されたこのセリフ。
 今の時代、親が子を殴る…いや、胸ぐらを掴むだけで逮捕される時代。親父にもぶたれたことないのは当たり前の時代となった。今の若者にはこのセリフの何がおもしろいのか分からないのだろう。

 時代の変化とともに移り変わるものは多い。かつて根性論は正しいひとつの考え方であったが今の時代、受け入れられないことの方が多い。ビシバシ鍛えると虐待と言われ、褒めて伸ばせ、ヨシヨシして育てろが主流となりつつある。犯罪行為においてもかつては暴力、窃盗など直接的な加害行為が多かったが最近取り上げられる犯罪行為は闇バイトによる脅迫加担犯罪、洗脳、ロマンス詐欺など直接的な暴力というより精神的な犯罪が増えた。いじめにおいても暴力から陰口など陰湿化している。一般社会においてもハラスメントと言えばセクハラであったものがパワハラを筆頭に多くのハラスメントが増えた。ほかにも人をジャンル分けするように○○系という言葉があった。お兄系やガテン系などファッションや職業を指していたが今では肉食系から始まり意識高い系、こじらせ系など性格面に焦点を当てたものが増えた。最近は冷笑系が流行っているらしい。

 この時代の変化を見ると、直接的な事象から精神的な事象に移行しているように感じる。なぜこのような移行が生まれたのか。様々な要因があるのだろうが、その一つにネット環境というものがある。20世紀末に生まれたインターネット、一般普及し携帯を通していつでもどこでもネット環境に入れるようになった2000年代。00’年代半ばにはSNSが生まれ、以降人々はSNSを交流の場とした。コロナ禍においては直接的な交流よりもネットを通した交流が主となり、会議もオンライン化した。人々は手をつなぐことより心をつぐことを主としはじめた。

 心をつなぐことを主とした人たちは精神的な行為に敏感になる。叱責されることは心への暴力行為と捉え、攻撃されたと認識するのだろう。またSNSでは誰が見ているか分からない環境にあるため、皆の前で叱責することは誰が見ているか分かる環境となりより精神的な攻撃と見られる。ドラマの監督や俳優が降板されたのもこう言うことなのかもしれない。一方で相手が分からないけど心の繋がりに幸福感を覚えることはロマンス詐欺にとって良い鴨である。心の束縛を利用したのが闇バイトや洗脳と言えるのかもしれない。直接的に人と関わると言うことは会話のキャッチボールが早く俊敏な感情の変化が生まれるが、ネットを通した間接的な関わり方はタイムラグが生まれることで感情の整理をし、相手がどう思うか考える時間が生まれ平和な交流を生むことができる。つまり俯瞰してみることが癖付いていると言えるのかもしれない。それが冷笑系となる要因なのかも。

 今の時代、心の繋がりを意識した交流が大事と言える。いくら同じ会社の仲間だと言っても心で繋がっていなければその人にとっては他人で攻撃される対象と見られるだろう。心の繋がっていない人に言われるとパワハラ・セクハラと思うが、心の繋がっている人なら同じことを言われても私のためとか冗談と思うことができる。では心の繋がりを求めて上の世代は飲みに行こうと言う。アルハラだと言われる。どないせぇと?笑
 心の繋がりは一朝一夕で生まれる物では無い。日々の積み重ねが心の繋がりとなる。

 インターネットは便利だ。SNSは便利だ。今や自宅で多くの人と交流できる。直接対人するとトラブルが起こるからネットを通した交流が主軸の生活だ。そんな人々はこれからどんどん増えるだろう。次第に現実世界は生命維持を目的とし、ネットの精神世界が主軸の世界となる未来もあるのかもしれない…。

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